食べることは、日常生活における楽しみの一つです。しかし、歯の健康を損なったり歯を失うと、食べ物をしっかりと噛むことができなくなり、食べる楽しみが奪われてしまいます。それだけでなく、全身の健康を損なうことにもつながります。
高齢になっても生涯健康で食べる楽しみを持ち続けられるよう、ここでは特に75歳以上の方の歯の健康について考えましょう。
『8020運動』は、80歳になっても自分の歯を20本残すための取り組みです。 人は最低20本の歯が残っていれば食べることにそれほど不自由を感じません。また、歯が残っていることで全身の健康維持にもつながります。
歯の健康に対する意識を高め、日常的にお口の病気予防に努めることで、高齢になっても充実した生活を送ることができます
口腔ケアの重要性
お口は「食べる」「呼吸する」という生命維持のための大切な役割を果たしています。また、「話す」「笑う」のようなコミュニケーションをとるためにも必要不可欠です。
お口の健康を守り、充実した生活を送るためには『口腔ケア』を行なうことが大切です。口腔ケアというと、歯磨きやうがいなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかしお口の中の粘膜は咽頭(のど)を経て、食道や胃などの消化器、内臓につながっています。また、気管や肺などの呼吸器にもつながっています。つまり、口腔ケアはお口の中のケアだけにとどまらず、お口とつながっている器官のケアを行なうことなのです。
お口の中には、歯がある場合300種類以上の細菌がいます。その数は数千億個といわれていますが、正しいケアができていない場合は1兆個以上にもなるといわれています。それが虫歯や歯周病の原因となっており、症状が進行するにつれて歯の健康を損なったり歯を失うことになり、噛む機能などが低下します。
誤嚥性肺炎
また、高齢や病気などで摂食(食べ物を食べること)や嚥下(飲み込むこと)がうまくいかなくなり、同時に体力や免疫力が低下すると、お口の中で増殖した細菌が食事時や就寝中に食べ物や唾液と一緒に気管から肺に入り、細菌感染を起こす誤嚥性肺炎にかかりやすくなります。そして肺炎は死因の上位を占めており、そのうち97%が高齢者といわれています。
当院では、お口の病気予防はもちろん、摂食・嚥下障害への対応や支援、機能訓練なども行なっています。お口だけではなく全身の健康を支え、さらには心の健康も支えられるよう、専門的な口腔ケアに取り組んでいます。
そして皆様が充実した生活をし、周りの人や社会と関わりながらいきいきと心豊かな日々を送れるようサポートさせていただきます。